【その医療情報本当に正しい?】根拠に基づく医療情報のピラミッド
あなたが、見ているその医療情報は本当に正しいものでしょうか?
そして、どのようにその医療情報の正確さを判断すれば良いのでしょうか。
今回の記事では、医療情報の正確さを確認することに役立つ
「根拠に基づく医療のピラミッド」*1を
出来るだけ分かりやすい言葉で紹介をしたいと思います。
この「根拠に基づく医療情報のピラミッド」を実際の医療情報に当てはめて
考えている記事はこちらです↓
私達は、インターネット・テレビ・SNS等、常に情報にさらされており、
それらの情報は、私達の日々の決断に影響を与えているといっても
過言ではありません。
あそこのごはん屋さん美味しいよ!といったレベルの話であれば、
色々試してみても良いのですが、
一方、医療関係の情報については、あなたの大切な命に関わる決断に繋がります。
このピラミッドは、”信用性のレベル”によって分かれており、
最下層にいくほど、正確さに欠け
上に登るにつれて、『正確な情報』となります。
ピラミッドの最下層(正確性低い):「一人のお医者さん・専門家の意見」
この情報は、非常に重要なのですが、偏っていたり間違っている可能性があります。
一般人である私達は、医師が言ってるから正しいとか、
専門家が言っているから正しいと考えがちですが、
その個人がどのような背景・出身なのかを
見極めてから判断することが重要です。
下から2番目:「病気になった人は、なんで病気になったのかな?と原因を調べる研究の結果」
この研究は、考えられる原因を突き止めていこうとする研究ですが、
気をつけなければいけないのは、
少数の人々しか研究の対象としていない場合や
全く同じ条件が揃った人間は、この世に一人もいませんし、
対象者の環境や行動をコントロールするのはとても難しいので、
研究結果にマイナスの影響を与える点があります。
下から3番目:「病気になった沢山の人達から、なんで病気になったのかな?と共通点を見つける研究の結果」
このレベルの情報は、病気になった人の生活習慣や、
食事等、様々な要因を調べ、共通点を見つけようとする研究です。
「タバコを日常的に吸う人が病気になる可能性が高い」というのは、
この段階の研究で確認された情報となります。
しかし、全く同じ条件が揃った人間は、この世に一人もいませんし、
環境や行動をコントロールするのはとても難しいため、
研究結果にマイナスの影響を与える点があります。
下から4番目:「病気になった人を、治療する人・しない人にふりわけて、違いがあるか調べる研究の結果」
この情報は、例えば、”最新の治療”を受ける人達と、受けない人達
結果を比べる実験ですが、
さらに、その2つのグループに分ける際に、
適当に人を選ぶという研究の結果です。
最も信頼性の高い研究となりますが、
弱点としてこの研究には多くの費用がかかり、
倫理的な問題も浮上してしまいます。
下から5番目:「病気になった人をどう治療すればいいか、研究結果の良いところ・悪いところを簡単にまとめたもの」
この情報は、専門家達が研究結果の良い点・悪い点を評価して要約したものです。
上から2番目:「病気になった人をどう治療すればいいか、研究結果の良いところ・悪いところをまとめた教科書的なもの」
ピラミッドの第5レベルでは、あくまでも、研究結果の良いところ・悪いところをまとめた要約ですが、この情報は、教科書的なもの(ガイドライン)です。
ピラミッドの頂点(一番正確):「2段・3段・4段目の研究結果の共通点(共通しない点も考慮する)」
この情報は、第2・第3・第4のレベルで行われた、
様々な研究結果から共通点を結論として、
つまり、科学的根拠に基づいた医学情報のピラミッドの頂点といえます。
例えば、「タバコを日常的に吸う人が病気になる可能性が高い」というのは、
沢山の研究によって分かり、ピラミッドの過程を経て、
科学的根拠があるとされたものです。
以下は、やや堅苦しい言葉で、上記と同じ内容を説明しています。
ピラミッドの最下層(正確性低い):「専門家の意見」
この情報は、”基礎”となり、非常に重要なものですが、
信念・個人的な意見・また、政治によって大きく影響されて
偏っている可能性があります。
一般人である私達は、医師が言ってるから正しいとか、
専門家が言っているから正しいと考えがちですが、
その個人がどのような背景・出身なのかを
見極めてから判断することが重要です。
下から2番目:「個人の病気の原因を過去に遡って考える研究・臨床研究の報告」
この情報は、”初めの一歩”とされ、
研究手法としては、可能性のある原因(変数)を特定しようとするものとなります。
弱点としては、「臨床実験」上の報告には、
少数の似たような治療を行った参加者しか含まれていない時もあるという点と、
変数(要因)をコントロールできないという点があります。
(意味:私達の人間の行動や環境は一人ひとり、全てコントロールできません。)
また、「個々のケースより、原因を過去に遡って考える研究」は、
似たような治療を受けていない人ととも、
比較する研究ではありますが、
少数の参加者しか含まれていない点と、
同じく、変数(要因)をコントロールできていない点があります。
※「原因を過去に遡って考える研究・臨床研究」は、専門用語で、「症例対照研究」といいます。
下から3番目:「集団に対し、病気の発生状況や頻度等を調査・原因を特定する研究の報告」
この情報は、生活習慣や食事、または他の要因が
長期的にどのように影響を与えるかといった、
傾向を見つけることを目的とする研究の結果です。
例として、「タバコを日常的に吸う人が病気になる可能性が高い」というのは、
この第3のレベルの情報に当てはまります。
この段階で、信頼性と汎用性にという観点では、”はじめの一歩”ではあります。
しかし、弱点として、①変数(要因)をコントロールできていない。
(意味:人間の行動や環境は全てコントロールできません。)
②大抵の場合、対象物は、ランダムに選ばれていない。
という2点があります。
※この研究は専門用語で、「疫学的研究」・「コホート研究」と言います。
下から4番目:「人をランダムに選び、治療したグループ・していないグループに分け、比較する研究の報告」
この情報は、例えば、”最新の治療”を受ける人達と、
受けない人達(標準的な治療やまたは、治療をしない・プラセボ(偽薬)を使用)に分け、
結果を比べる実験ですが、
さらに、その2つのグループに分ける際に、
ランダムに人を選ぶという研究の結果です。
最も信頼性の高い研究となりますが、
弱点としてこの研究には多くの費用がかかり、
倫理的な問題も浮上してしまいます。
※この研究は専門用語で、「ランダム化比較試験」といいます。
下から5番目:「科学的根拠を批評した内容を含めた概要」
この情報は、専門家達がエビデンスを、良い点・悪い点を評価して要約した概要です。
上から2番目:「科学的根拠を批評した内容を指針としてまとめたもの」
この情報は、ピラミッドの第5レベルでは、あくまでも”概要”ですが、
これは、エビデンスを、良い点・悪い点を評価した内容を
指針としてまとめたもの(ガイドライン)です。
※例を挙げると、「がん治療のガイドライン」がこれに当てはまります。
ピラミッドの頂点(一番正確):「2段・3段・4段の研究から、”一貫する共通点”を結論付けながらも、少数例も考慮したもの」
この情報は、第2・第3・第4のレベルで行われた、
様々な研究結果達(良い結果・悪い結果)の情報を体系的に集め、考慮し
その中で、一貫しているものを「事実」=「科学的根拠」として、
結論づけることを目的とする一方、
マイナーなケースも、併せて考慮しようとするものです。
つまり、エビデンスに基づいた医学情報のピラミッドの頂点といえます。
尚、「タバコを日常的に吸う人が病気になる可能性が高い」というのは、
沢山の研究によって分かり、ピラミッドの過程を経て、科学的根拠があるとされたものとなります。
しかし、医師・専門家も神様ではなく人間ですので、
リアルタイムに全ての研究結果・論文を網羅することは大変難しいことです。
※大量の論文を網羅し、的確&適切な治療ができるように、
IBMの「ワトソン」のような人工知能の開発が現在勧められています。
専門家が言っていたから〜とすぐ信用してしまうのは、大変危険なことです。
医療情報を見た時に、まずは、信頼性のレベルの高さの確認を行ってみましょう!
この「根拠に基づく医療情報のピラミッド」を実際の医療情報に当てはめて
考えている記事はこちらです↓
腫瘍内科医 「勝俣範之さん」の本気の本
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*1:この記事は、こちらの元に作成されています。→The Evidence-Based Medicine Pyramid! - Students 4 Best Evidence